公開講座 「作って飛ばすラジコン飛行機」 原理編

 

担当 葉山清輝


1.ラジコンとは
 ラジコンとは,ラジオコントロールの略で,無線操縦の意味です.飛行機や車やヘリ,ボートなど様々な模型を無線で(電波をつかって)操縦することができます.一般に,電波を使う場合には電波法のという法律の規制があり,使用する周波数や出力が細かく決められています.しかし,無線操縦をホビー向けにも広く利用できるように,メーカーが審査規格を通った物を製造,販売していますので,後に述べる周波数帯さえ守れば誰でもラジコンを使うことができるようになっています.

2.周波数の区分
 周波数の使用区分は次の様に決められています.この区分を守らないと重大な事故を引き起こす可能性があり,そうなれば損害賠償請求をうけることにもなり兼ねません.周波数の区分を守り,更に安全を確かめてから使用して下さい.

3.プロポとは?
 ラジコンの送信機をプロポと呼ぶのはご存じでしょう.プロポの語源は 「プロポーショナル=比例する」ということで,送信機のスティック操作に比例してサーボを作動させることができます.
分類
 
プロポには様々な機種がありますが,その区分けの基本となっているのはch(チャンネル)の数,バンド,変調方式などです.車やボートのようにステアリングとスロットルの2系統の制御を行うものが2ch、飛行機の中でも無動力のグライダー は2chで操縦することができます.動力を有する飛行機やヘリコプターになると4ch以上10chといった機種もあります.電波の変調方式にはAM,FM,PCM方式があります.
混信にに注意!
 同じ周波数 (バンド)で同時に電波を発すると発信方式に関わりなくお互いに混信してコントロール不能となってしまいます.周波数区分を守ることと同時に,混信を起こさないように周囲(場合によっては半径2〜3km)の人とお互いに周波数が重ならないか確認しあってください.
送信機
 図のように本体に操作を伝えるスティックと電波を送信するアンテナが付いています.左が2ch,右が6chのプロポでどちらも40MHz帯のものです.

   
送信機                 受信機

受信機
 送信機から送られてきた電波を受信用アンテナで受け、その信号を解読して、操作をサーボに伝えるものです。受信機には電池(スイッチ),サーボの接続コネクタが用意されています。最近では標準品と較べて小型の受信機も市販されています.
サーボ
 受信機からの指示に従って、送信機で操作された量だけ軸が回転するモータです.

   
サーボ      受信機,サーボ,バッテリーを接続

プロポから出ている電波を観測してみよう!
 プロポから出ている電波は簡単に観測できます.プロポのアンテナに導線を巻き付け(アンテナとは導通しないように),オシロスコープ(電気信号を画面上で見る装置)に入力します.すると画面上にプロポから出ている電波の波形が現れます.


電波の観測方法

 波形を拡大してみると,信号を検出するタイミングを表す同期信号が等間隔に現れ,その同期信号の間に各チャンネルの信号が並べられています.次図は2チャンネルのプロポの電波の観測例です.プロポのチャンネル数が増えると,2チャンネルの信号の後に続いて信号が並びます.1チャンネル分の信号を拡大してみると,スティックを右や左に倒した時に信号の幅が変わることが分かります.受信機側ではこの幅を調べてサーボを動かします.

 

4.グライダーのメカニズム
揚力の原理

 空気の流れの中に板を入れた時,流れと平行な板には大きな力は発生しませんが,この板を下に落とそうとしても空気の抵抗によってすぐには落ちません.いま流れに対して角度(迎角といいます)をつけてみると板には斜め上方に力が生じます.動力を持つ飛行機はこの力を利用して飛ぶことができます.しかし,グライダーのように動力を持たない飛行機では,空気の抵抗により速度を失って飛び続けることができません.右図のような翼断面を持つ場合,翼の上面と下面を流れる距離の差から、上面の空気が速く流れるため相対的に下面より表面圧力が下がり、上に吸い上げる揚力という力が生じます.翼断面のカーブは空気の流れを整流し、さらに効率よく安定した揚力の発生や安定性、気流の剥離を防ぐ働きもあります.グライダーはこの揚力で空中を滑空することができます.

 

グライダーの原理
 グライダーはそれ自身では動力を持ちませんので,紙飛行機のように一旦飛んだら空気の中を降りてくるだけです.下の図は,滑空中のグライダーの力の釣り合いを示したものです.


グライダー飛行中の力の釣り合い

グライダーは重力により引っ張られますが,重心が主翼の中心より前にあるので,空気は主翼の後ろ側に抜け,グライダーは空気に乗って前向きに進むことになります.その際揚力で主翼に上向きの力が掛かるので沈下が抑えられます.重心から見て主翼に上向きの力が働きますので,そのままでは前のめりになってしまいます.そこで尾翼による下向きの揚力で釣り合いを保ちます.また,グライダーには空気の抵抗が働いています.これら全部の力の釣り合いで,グライダーは進行方向に向かって,一定速度て沈下を最少に抑えて飛ぶことができます.
 以上から分かるように,グライダーは常にわずかに下向きに(頭を下げて)飛ばさなければなりません.そのために,エレベータで尾翼の揚力を調整し,常に一定以上の速度でわずかに下向きに飛ばさなければなりません.機首が上がると速度を失い,揚力が無くなって失速という状態になり,急に落ちてしまいます.


エレベータの操作と失速状態

旋回と上半角の関係について
 機体の旋回は,ラダー操作によって行います.次の図のように,ラダースティックを左に倒すとラダーが左に切れます.すると上から見て尾翼を右方向に押す力が生じます.主翼には上半角(主翼中央から上向きに折れた角度)が付いているので,これを前から見ると,左右の主翼の向角が変わることになり,その結果,揚力に不均等が生じます.


旋回の様子

機体の右翼の揚力が大きくなり,左翼の揚力が小さくなるので機体は左に傾き,左旋回に入ります.ラダーを切ってから旋回に入るまではちょっと時間遅れがあります.また,旋回を終了するには,機体を水平にして左右の揚力を均等にしてやらなければなりませんので,逆方向にラダーを切ってやる必要があります.旋回中は地面から見た主翼の投影面積が小さくなるので沈下が大きくなります.旋回中はエレベータを少し引いてやると沈下が抑えられなめらかな旋回ができます.

こんな場所での飛行は禁止