3.7 論理集積回路
これまで述べてきたような論理素子は電子回路により実現され,多様な構造と種類の論理集積回路(デジタルIC)
として市販されている.論理集積回路はTTLとCMOS-ICに大別できる.
TTLは回路の主要部品がトランジスタだけで構成されているものである.2入力NAND回路の構成を図3.13に示す.
電源電圧VCCは通常5Vを用いる.マルチエミッタトランジスタTr1の入力のどちらかがGNDに接続されたときTr1は
導通状態となり,両方ともVCCに接続されたときTr1は非絶縁状態となる.Tr1の出力が次段で反転出力される.
図3.13 2入力NAND回路の構成
CMOS-ICとは相補型MOS-ICであり,n−MOSとp−MOSFETを組み合わせた回路構成となっている.
図3.14にCMOSインバータの回路例を示す.
図3.14 CMOSインバータ
CMOSの特徴としては,n−MOSとp−MOSの両方が同時に導通状態になることがないので低消費電力である.
しかし,ゲート電極の容量により動作が遅いという欠点があった.最近では高速のCMOS回路が作製できるようになり,
従来は高速用途として用いられていたTTLと置き換わっている.
論理集積回路の実例として,2入力NAND回路を実装したTTL-ICであるSN74LS00について図3.17に示す.
VCCとGND間に5V電源の+と−をそれぞれ接続した後,1番,2番ピンの入力に先に示した論理レベルの電圧を
加えればそれに応じたNAND出力が3番ピンに出力される.このICには計4個のNANDが含まれ,
他のNAND回路についても同様に使用できる.
TTLの型番について,最初のSN74はメーカー名(SN,テキサス社)とシリーズを表している.
メーカーが違えば,最初の2文字が異なる.次の“LS”はファミリを示し,最後の00が型番を示す.
例えば10は3入力NAND,20は4入力NANDというように多種多様な論理集積回路が用意され,
固有の型番がつけられている.
CMOS-ICの型番については,高速CMOSの場合TTLと同様な型番で74HCシリーズが用意され,
TTLとは型番の異なる,40,45または14などのシリーズもある.
図3.17 SN74LS00